ウォン・カーウァイ作品との出会い

ブリジット・リンは映画の前半で、サングラスを四六時中かけたままです。バーで煙草を吸いながらお酒を飲んでいます。ウォン・カーウァイ
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ウォン・カーウァイ作品との出会い

長年、ハリウッドの大げさな映画程度しか観たことのなかった私がウォン・カーウァイを知ったのは、2003年の10月。その前年からCDに嵌っていたフェイ・ウォン出演の『恋する惑星』をDVDで観たときでした。

この作品でのフェイ・ウォンは、彼女の音楽に対する雰囲気とは違って余り気合いが入っておらず、好きな男の部屋に忍び込んで毎日掃除に励み、自分自身の行動だけを楽しんでいるかのように振る舞っていて面白かったです。

また、トニー・レオンも優しそうな雰囲気一杯に演技をしていて、金城武もフェイ・ウォンに負けずとパイナップルの缶詰を一日に何個も食べるという天然のバカさを見事に発揮していました。

おまけに金城は、喉が焼けて次の出演作『天使の涙』では発話ができなくなっています。

このような俳優たちの面白さだけでなく、ウォン・カーウァイが映画で余すところなく発揮する遊び感覚。当時の私には、場面の展開も、一場面のアングルも、ラテン系のノリでガンガンにやってくる音楽も、全てが新鮮でした。これが香港映画なのかと茫然自失、どこか取り残された気分になったものです。

しかし、ウォン・カーウァイの面白いところはそれだけではありません。

「恋する惑星」前半では金城武が瞬間的な恋をしますが、相手の女性は映画の前半で、サングラスを四六時中かけたままです。

ブリジット・リンは映画の前半で、サングラスを四六時中かけたままです。バーで煙草を吸いながらお酒を飲んでいます。

ブリジット・リンは映画の前半で、サングラスを四六時中かけたままです。ウォン・カーウァイ監督『恋する惑星』香港、1994年。Copyright (c) 1994 Block2Pictures Inc. All Right Reserved.

ですから映画だけではその女優が誰かを特定できません。その女優がブリジット・リンという台湾出身の有名女優だというのは、一緒に観た友達から教えてもらいました。

これはメチャメチャ失礼じゃないかと一瞬ひるみました。この大胆さの前に、善悪の判断から離れた心地よさを感じたもの確かでした。

しかし。

そもそも、サングラスを最初から最後までかけさせるのが女優に対して失礼だとすれば、女優はその点を抗議すればいいし、話がまとまらなければ降板という手段も考えられます。

そこで「じゃあ、なんで出演したんだ?」という疑問がわきます。

今でもサングラスの詳しい経緯は知りませんが、安直には「ウォン・カーウァイだから」と答えるしかなさそうです。

なぜなら、彼の手に掛かれば映画撮影という仕事が祭りとなって、数年越しのオリンピックになってしまうのですから。《スベテガ、王家衛ノマエデハユルサレル…》。

もっとも『恋する惑星』の撮影期間は確か半年ほどだったのですが、ウォン・カーウァイの撮影はどうも一大イベントになる傾向が強いですね。

「お祭り」というウォン・カーウァイの特徴

この「お祭り」という点がウォン・カーウァイの特徴の一つで、ブリジット・リンの他の映画を観れば観るほど、ウォン・カーウァイの遊び感覚が強烈に活きてきます。

そして、ブリジット・リン本来の演技力もますます輝いてみえてきます。

おそらく、ウォン・カーウァイのマジックは彼自身だけでなく俳優たち皆が輝ける舞台を作ることにあると思います。

例えば、チャン・イーモウの愛人として女優にのし上がってきたチャン・ツーイーにしても『2046』では見事に映えた演技をしていました。これまでの配役、たとえば田舎娘や時代劇の武士とは大きく違った役でしたが「2046」で味の合う女性を演じました。

トニー・レオン演じるチャウ・モウワンの部屋を除きこむバイ・リン(チャン・ツーイー演)

ウォン・カーウァイ監督『2046』中国・香港・フランス・ドイツ、2004年。Copyright (c) 2004 Block2Pictures Inc. All Right Reserved.

そして、この映画で誘い誘われる女・純粋な女性・官能的な女・悪戯っぽい女の子という役柄を同時に演じ切ってしまう20代半ばのチャン・ツーイーに首っ丈にもなりました。

私は「2046」を観るために1ヶ月で4回も映画館へ通いました。それは、観るごとに凄みが伝わってくる彼女に会いたくなったからでした。

そして、『英雄』(HERO)や『十面埋伏』(LOVERS)では出し切れなかった「痛げな女の子」の側面を表現させ尽くしたウォン・カーウァイをも惚れ直しました。

嫌いな俳優でも好きになれる、好きな俳優はますます好きになる、そして何よりも音楽が軽やかで映像が美しい!

これがウォン・カーウァイから脳髄ショックを受け続けた私の初感想です。

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